雪解けは遠い

除雪したい動物看護師日和

AHT、とは

仕事何してるの?と聞かれて動物看護師ですと答えると、十中八九「へ、へぇ?獣医と違うの?」という反応が帰ってくる。

正直、動物病院に我が子を連れて行ったことがある人で(ああ先生以外の人ね)という認識だろうし、動物を飼育したことがない人ははてなが頭上に浮かぶだろう。
私の仕事はまだまだ認知度が低いのだ。

学生時代、学校機関の理事が「国家資格化が近く、知名度はますます上がるし、安定した生活ができるはず!」と言ってはいたものの、国家資格化の実現は2016年の今でもされていない。
涙拭け、私。







そもそも動物看護師とはどんな仕事なのだろうか。
幼い頃の私は「動物をいっぱい触れる」「獣医みたいに手術で切ったり命に直接関わったりしない」と元気よく答えてくれるだろう。

残念ながら、その答えに丸はあげられない。






実際の動物看護師の仕事を簡単に言うと、
【獣医師がやりたい作業に集中できるよう、他の全てをこなす万能サポーター】
である。

資格としては、2016年現在では、動物看護師育成機関等の民間機関が主体となって試験・発行を行っており、資格所有者は「AHT」「VT」と呼ばれ動物医療の世界に飛び込んでいく。

動物看護師(Wikipedia)






「獣医だけでは駄目なの?」という考えがあるなら、少し考えて欲しい。
獣医師の業務は基本的に「診察」「処置(治療・手術)」「処方」だ。
ではそれだけを行っていたとして、病院の経営が回るのか?
答えは否である。

診察や処置を行っている間にも他の患者が来るし、電話もかかってくる。
薬を処方しても人間のように薬局で作ってもらう訳にはいかない。
そもそも診察しようにも、相手は動物だ。
じっとしているとは限らない。
院内の掃除や足りないものの発注まで、やらねばならないことは山積みだ。



その為に私達がいる。








私達の基本的に行っている業務をざっと並べると、

・受付,会計,電話対応
・問診→問診のカルテ記入
・診察室の準備→獣医師に診察依頼
・診察補助(保定、必要器具の準備等)
・検査(血液検査等)
・処置準備→処置補助(手術助手等)
・薬の作成
・入院動物の管理→何かあれば獣医師に報告
・院内清掃
・在庫管理,発注,業者対応
(・スタッフのシフト管理)
(・病院で飼育している動物の管理)

といった感じだろうか。
勿論「獣医師がどこまで求めるか」「規模」「予約制か否か」「受付専門等業務が分かれているか」によって、病院ごとの個性は大きい。



ここでうわっと思った過去の私、そうさよく考えな。
病院での一日は、

患者「すみませーん初めて来たんですけど」
獣医「こっち補助入って!」
電話「Prrrrr」
獣医「急患が来たよ!」
患者「薬まだですか?」
獣医「手術の準備できてる?」
業者「新キャンペーンでこのPOPを…」
在庫(残り少ないよ)
検査(早く次の工程行って)
患者「ごめんなさい待合でおしっこしちゃった!」
獣医「ねぇ手術の準備できた?」

私達「今行きます!!!!」

という風に過ぎていく。
(勿論言われる前に気づいて準備等進める、“かゆいところに手が届く”仕事ぶりが求められる)







ここまで読んで(頑張ろう!)と思えたら、きっとこの仕事に向いているんだろう。



ああそうそう、お局やお局のお気に入りがグループを組んでいる職場なら、上記の会話の間に

お局「あの子が自分で気づいてやってくれない気がきかない」
周り「ですよね〜!」
お局「勝手にやらないで」
周り「ですよね〜!」

というHEY!YO!の如しラップのリズムが刻まれるが、それにも負けないでほしい。

きっとそれは、女性主体の職場なら多かれ少なかれあることだ。
誰か一人でも有力な味方をつけるか、ストレスを体調不良という形で訴えることで、多少の柔和はあるだろう。



後、相手は動物で、職場は医療機関だ。
糞尿、嘔吐、涎、血液、内蔵とのご対面は頻繁だし、生傷は絶えない。
巨体を持ち上げることも、重い荷物を運ぶことも、日常茶飯事の為、腰痛に負けないための体つくりは将来のために必須である。
飼い主も物分り&金払いの良い人だけではないが、全ての対応を獣医師任せと言う訳にはいかない。




ともかく、検討を祈る。





因みに給料、待遇は、よほどの所でもない限り期待できない。
週休2日、残業代、ボーナス、有給、昇給…それらは夢だと考えていると、もらえた時の喜びが増す。

Carrier Garden

「動物が好きだから」
「お金のためではない、動物のために働く」
そういう精神の猛者の努力と根性で、この職業は成り立っている。

因みに私は複数の獣医師から
「命のために頑張るんだから、待遇は望むものではない」
と言われた。
その時「そうですよね!流石先生!」と返した過去の私を、今の私は殴りたい。











ここまで書くと、過去の私はこの道に進むことを絶望するだろう。

しかし、意識が朦朧としていた子が初めてしっぽを振った時、麻痺していた足を使って走り回る姿を見た時、毎年元気に飛びかかってくる巨体を受け止める時、新しい命が手のひらで安心しきって寝ている時、飼い主さんの笑顔を見られる時、本当にこの上ない喜びを感じるのだ。




理不尽な業界だと思う。
それでも、私は今日も白衣に身を包む。
動物たちと飼い主さんの助けに、少しでもなれていると信じて。